2005年 03月 23日
オババ先生 |
きょう、京浜東北線が停電のため2時間以上ストップした。その後、ニュースで運転再開の知らせを聞き、さらに1時間ほど経ってからホームで列車を待っていた。すると、今度は「踏み切りで押しボタンが使われたので、乗務員が安全を確認してから電車を動かします」とかいうアナウンスが流れ、かなり待たされた。
大切な打ち合わせに出かける途中だったので、先方に「遅れるかもしれません」と電話をした。タイミングがいいのか悪いのか、その電話を切ったとたんに列車が来た。
帰りは、東京駅の山手線のホームに人が落ちたとかで、またちょっとホームで待つことになった。
きのう、家から徒歩2分くらいのところにある、我が町会の耳鼻科に行った。大通りからチラっと見た感じでは綺麗で新しい病院だと思っていたのだが、新しいのは手前の建物だった。その綺麗なマンションと、奥の耳鼻科の看板とがかさなって見えて、勘違いしていた。耳鼻科の建物は、少なくとも私よりは年上……築40年以上は経っていると思われた。
――やっぱり、駅に行く途中の耳鼻科に行こうかな。
と思いながら、とりあえず様子を見ようと恐る恐るドアをあけると、私が通っていた田舎の中学の校舎によく似た板張りの待合所に、結構な数の患者が座っていた。
受付のオババさまは、私が入ろうが入るまいが構わないといった、超然とした態度で自らの職務をこなしている。鼻に入れる薬に特有のものだとあとでわかったのだが、異様な匂いが生暖かく湿度の高い室内に充満していた。
今さら別の病院に行くのも面倒になったので、なかに入った。保険証を受付のオババさまにわたしても、ジロリと睨まれただけで何も訊かれなかった。待合室から診察室が丸見えで、なんと、医者も正真正銘のオババさまだった。おそらく昭和ひとケタの生まれ。頭にくくりつけたシルバーの覗き穴のついた丸いプレートがよく似合い、患者の鼻に突っ込む器具を手にした姿は、そのまま漫画になりそうな感じだった。
――これだけ患者がいるということは、あのオババ先生、腕は確かなのかな。
私の番が来た。
立ちっぱなしで治療をするオババ先生の向かいの椅子に、私は座った。
「どうしたんです?」とオババ先生。
「花粉症だと思うんですが」と私。
「そう。なったのは今年が初めて?」
ああ、こういう学校の先生いたよなあという感じの、よく通る声で話す。
オババ先生は、頷く私に、
「今年は特にそういう人が多いんですよ」と言いながら、鼻に素早く器具を差し込み薬を注入する。右の穴につづいて左、次は突っ込むものを変えて右、左。手の動きにはまったくブレがなく、素早い。さらに、「鼻が詰まってますね」と、鉄製の綿棒のようなものに薬をつけたものを2本鼻に突っ込んだ。
私はたまらずくしゃみをして、それらを噴出してしまった。目からは冗談のように涙が出る。これだけ泣いたのはいつ以来だろうか。というくらい涙が出た。
喉にも薬を塗られてさらに泣き、その後、自分で器具を持って鼻と口に噴霧状の薬を注入して治療が終わった。
会計のとき、受付のオババさまが私に訊いた。
「目薬はいりますか?」
「あ、もらっておきます」
「鼻に入れる薬は、1日2回がいい? それとも4回にする?」とオババさま。
「う~ん、2回ぐらいにしておきます」
患者が決めるべきことかどうかわからなかったが、考えてみれば、たぶん耳鼻科に来たのは生まれて初めてなので、適当に応えておいた。「なので」がちゃんとした順接になっていないような気がするが、それはさておき、ずっと調子の悪い左耳を診てもらうのを忘れてしまった。
薬の種類が多かったので、オババさまがどれが1日3回で、どれが2回かをメモ用紙に書いてくれた。それから、「鼻をかむときは、もっとそっとかまなきゃダメだよ」と教えてくれた。
昨日は雨が降った。そしてきょうも。花粉の飛散量が少ないようだ。
さらに薬が効いているのか、ぜんぜん発作が出なくなった。こりゃ助かる。
いや、ホント、病院に行って、これだけてきめんに効き目があらわれたのも久しぶりのような気がする。オババ先生、ありがとうございました。
大切な打ち合わせに出かける途中だったので、先方に「遅れるかもしれません」と電話をした。タイミングがいいのか悪いのか、その電話を切ったとたんに列車が来た。
帰りは、東京駅の山手線のホームに人が落ちたとかで、またちょっとホームで待つことになった。
きのう、家から徒歩2分くらいのところにある、我が町会の耳鼻科に行った。大通りからチラっと見た感じでは綺麗で新しい病院だと思っていたのだが、新しいのは手前の建物だった。その綺麗なマンションと、奥の耳鼻科の看板とがかさなって見えて、勘違いしていた。耳鼻科の建物は、少なくとも私よりは年上……築40年以上は経っていると思われた。
――やっぱり、駅に行く途中の耳鼻科に行こうかな。
と思いながら、とりあえず様子を見ようと恐る恐るドアをあけると、私が通っていた田舎の中学の校舎によく似た板張りの待合所に、結構な数の患者が座っていた。
受付のオババさまは、私が入ろうが入るまいが構わないといった、超然とした態度で自らの職務をこなしている。鼻に入れる薬に特有のものだとあとでわかったのだが、異様な匂いが生暖かく湿度の高い室内に充満していた。
今さら別の病院に行くのも面倒になったので、なかに入った。保険証を受付のオババさまにわたしても、ジロリと睨まれただけで何も訊かれなかった。待合室から診察室が丸見えで、なんと、医者も正真正銘のオババさまだった。おそらく昭和ひとケタの生まれ。頭にくくりつけたシルバーの覗き穴のついた丸いプレートがよく似合い、患者の鼻に突っ込む器具を手にした姿は、そのまま漫画になりそうな感じだった。
――これだけ患者がいるということは、あのオババ先生、腕は確かなのかな。
私の番が来た。
立ちっぱなしで治療をするオババ先生の向かいの椅子に、私は座った。
「どうしたんです?」とオババ先生。
「花粉症だと思うんですが」と私。
「そう。なったのは今年が初めて?」
ああ、こういう学校の先生いたよなあという感じの、よく通る声で話す。
オババ先生は、頷く私に、
「今年は特にそういう人が多いんですよ」と言いながら、鼻に素早く器具を差し込み薬を注入する。右の穴につづいて左、次は突っ込むものを変えて右、左。手の動きにはまったくブレがなく、素早い。さらに、「鼻が詰まってますね」と、鉄製の綿棒のようなものに薬をつけたものを2本鼻に突っ込んだ。
私はたまらずくしゃみをして、それらを噴出してしまった。目からは冗談のように涙が出る。これだけ泣いたのはいつ以来だろうか。というくらい涙が出た。
喉にも薬を塗られてさらに泣き、その後、自分で器具を持って鼻と口に噴霧状の薬を注入して治療が終わった。
会計のとき、受付のオババさまが私に訊いた。
「目薬はいりますか?」
「あ、もらっておきます」
「鼻に入れる薬は、1日2回がいい? それとも4回にする?」とオババさま。
「う~ん、2回ぐらいにしておきます」
患者が決めるべきことかどうかわからなかったが、考えてみれば、たぶん耳鼻科に来たのは生まれて初めてなので、適当に応えておいた。「なので」がちゃんとした順接になっていないような気がするが、それはさておき、ずっと調子の悪い左耳を診てもらうのを忘れてしまった。
薬の種類が多かったので、オババさまがどれが1日3回で、どれが2回かをメモ用紙に書いてくれた。それから、「鼻をかむときは、もっとそっとかまなきゃダメだよ」と教えてくれた。
昨日は雨が降った。そしてきょうも。花粉の飛散量が少ないようだ。
さらに薬が効いているのか、ぜんぜん発作が出なくなった。こりゃ助かる。
いや、ホント、病院に行って、これだけてきめんに効き目があらわれたのも久しぶりのような気がする。オババ先生、ありがとうございました。
by akihiro_shimada
| 2005-03-23 22:30
| プライベート